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村井亮介の いまどきノベル

村井亮介の いまどきノベル

若君っ貴公子のご自覚をっっ 11

<若君っ貴公子のご自覚をっっ 11>


第5章 嘘か真か


「やあ、孝太君」


社長は随分とやつれた印象を受けた


そして二人が自分のことを「孝太君」と呼んでいることに気づいた



「あのね」


「はい」


「みんな、嘘だったんだね」


「は?」


「山城相談役がね、ヤマトの社長が織田信長だと思い込ませて・・・


マインドコントロールしたんだって」


「マインド・・・」


ユリ姫が話を続ける


「ヤマトの社員から昨日正式な告発があってね、


それで警察が相談役を任意同行したらあっさり嘘だったって認めたのよ」


「それに自分は実は顔江直継の生まれ変わりじゃないって言ったんだよ」


「でも、社長、殿と若と姫のことは本当だったって言ってたんでしょう??」


「信じられるか、あんな詐欺師のいうことなんか」




みると「毘」の旗は取り外されていた



「これからどうなるんですか?」


孝太が心配すると


「うん『中杉剣心RPG』のシリーズは続けていくよ


でも、僕が剣心ってのは、もうないから」


「あたしは今まで通りに秘書として働くのよ。

息子の嫁としてではなくてね

あなたは・・・」


「孝太君、君は高校生活に集中した方がいい、


学校で学ぶべきことがまだたくさんあるはずだ」


「そうだわね、学校のお友達とのお付き合いももっと大切にすべきだし・・・」


「はい、クビですね」


と、しょげ返っている孝太に社長は意外な言葉をかける



「君の人間性と能力の高さはよく知ってるから」


「え?」


「高校か大学を卒業したときにまだうちの社にいいイメージを持っていたなら」


「持っていたなら?」


「その時にはいつでも歓迎するよ。


無条件で君を雇おうじゃないか。


ただし、今度のことのような特別待遇はしないからね」


「はい!」


明るい顔を社長に向ける孝太。


ユリ姫・・・いや宮瀬秘書も孝太を微笑んで見つめていた


「孝太君、残念だわ、


私的にはあなたと昔夫婦だったって信じたいのに」


(こくり)


黙ってうなずく孝太


孝太を見送って一緒に表に出た宮瀬秘書だった


「だけど、まるっきりぜんぶ相談役の言ってたことが嘘という気はしないのよ」


「僕もそうです」


「まあ、あたしは面白がってただけって面も強いけどね」



「信じる信じないってことは好みの問題と思うんです」


「うん」


「問題はそれが事実か嘘かを検証できないことに関してどういうスタンスをとるかだと」


「あら、しっかり考えてるのね」


「わからないことは『わからない』で、ずっと保留にした方がいいような気がするんです」


「いいこと言うわね、同感だわ」


「判断の客観的な材料が少ないことを無理矢理に信じる信じないで決めないで、


きちんと時間をかけて検証した方がいいんじゃないかと思うんです」



「うーん、なかなか深いこと言うのね、感心したわ。


やっぱりあなたはあたしの旦那様だわ」


「え」


「うそうそ、今のは冗談よ」




「ぷ」


「うふふ」




「ねえ、もしも、もしもよ、あなたが成人した頃に私たちがバッタリ再会して」


「はい」


「その時に二人ともフリーだったら・・・」


「フリーだったら・・・(ごくり)」



「それと社長がさっき言い忘れてたけど、


合戦の褒美ね、


あれはもらっていていいそうよ」



「えっ、詐欺だったんでしょう?」


「タケヤの支社長もうちの社長もあのタケヤとナカスギの戦いを


嘘だったことにはしたくないんですって」



「すごく嬉しいです」



「うふ、それといつでもナカスギ本社に遊びに来ていいのよ」


「あ、ほんとに?」


「ナカスギから新作ゲームが出たらタダであげるわね


それにゲームのテストプレイルームにお友達つれて遊びにいらっしゃい


いつでもタダで遊ばせてあげるわね」




そうして孝太はナカスギ本社に別れを告げた。


なんだかとっても名残惜しい気持ちになったのだった。



つづく





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